なく

なく
I
なく
〔打ち消しの助動詞「ず」のク語法。 上代語〕
(1)「…ないこと」の意を表す。

「妹が髪上げ竹葉野(タカハノ)の放れ駒荒びにけらし逢は~思へば/万葉2652」

(2)文末に用いられて, 上の事柄を詠嘆的に打ち消す。 …ないことだなあ。

「天の川去年(コゾ)の渡り瀬(ゼ)荒れにけり君が来まさむ道の知ら~/万葉2084」

II
なく【泣く】
〔「音(ネ)」の母音交替形「な」の動詞化〕
(1)人が, 悲しみ・苦しみなどのために声を出し, 涙を流す。 また, 喜びなどで涙を流す場合にもいう。

「人前で大声で~・く」「赤ん坊が~・く」「音のみ~・きつつ恋ふれども/万葉 481」

(2)ひどい目にあって, 嘆き悲しむ。

「不運に~・く」「重税に~・く」

(3)無理な要求を受け入れる。

「しかたない, もう百円~・きましょう」

(4)そのものにあたいしない。

「看板が~・く」

‖可能‖ なける
泣いて暮(ク)らすも一生(イツシヨウ)笑(ワラ)って暮らすも一生
泣いて暮らしても笑って暮らしても, 人間の一生に変わりはない, 同じ一生なら愉快に暮らすほうがよい。
泣いて馬謖(バシヨク)を斬(キ)る
〔三国志(蜀書, 諸葛亮伝・馬謖伝)〕
情として処分するに惜しい人物であっても, 違反があったときには全体の統制を保つために処分する。
馬謖
泣いても笑っても
どんなに思い悩んでみても。 どうしてみても。

「~入学試験まであと一週間」

泣く子と地頭(ジトウ)には勝てぬ
ききわけのない子供や横暴な権力者の無理には従うほかはない。 道理を尽くしても, 理の通じない者には勝ち目がないことにいう。
泣く子も黙(ダマ)る
わがままを言って泣いている子供も泣くのをやめるほど, 恐ろしい存在であることのたとえ。
泣く子も目を開(ア)け
泣いている子供でも時には目をあけて周囲の情勢をうかがう。 分別がないように見える者でも時と場合に応じて振る舞うものだということ。
III
なく【鳴く・啼く】
〔「泣く」と同源〕
鳥・獣・虫などが声を出す。

「小鳥が~・く」「虫が~・く」

‖可能‖ なける
︱慣用︱ 蚊の~ような声・かんこ鳥が~/鶯(ウグイス)鳴かせたこともある・雉子(キジ)も鳴かずば打たれまい

Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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